ブルサの大モスク、ブルサ、モスク
オスマン帝国の古都ブルサの代表的なモスクが、ブルサの大モスクである。1396年から1399年にかけて、オスマン帝国第4代皇帝のバヤジット1世の令により建設された。人々でにぎわう町の中心地に位置し、20のドームが連なるモスクは遠くからでもひときわ目をひく。オスマン帝国の大旅行家、エヴリヤ・チェレビは、このウル・ジャーミイを「ブルサのアヤソフィア」と表現した。
モスクに入って目につくのが、巨大な柱に描かれたバロック様式の重厚な壁画装飾と、アラビア語のカリグラフィーだ。モスク内は、幾何学文様や植物文様よりも、カリグラフィーをメインに彩られている。カリグラフィーというと単なる文字でしょ?と思いがちだが、読ませるための文字というよりも装飾的な意味合いで使われることも多い。そのため、よく目を凝らしてみないと文字だとわからないこともあれば、アラビア語のネイティブでも解読不可能だったりすることもある。アラビア語のカリグラフィーは代表的な書体がいくつかあるが、ここブルサの大モスクで使われている書体は13種類にもおよぶ。書体が異なれば、まったく違う文様に見えるのも特徴である。柱に描かれたカリグラフィーは、41人のアラビア書道家たちが手がけたもので、その”書道作品”の総数は192にもなるという。それゆえに、カリグラフィーにあふれたこのモスクは、「アラビア書道博物館」とも呼ばれている。
書道作品の中には、トルコ語でアイナル(ミラーリングと言う意味)と呼ばれる左右対称なカリグラフィーやトゥグラと呼ばれるオスマン帝国のスルタンが使っていたアラビア文字のサインといった特徴的なカリグラフィーも紛れ込んでいる。
トゥグラは、オスマン帝国のスルタンだけでなく、ムガール帝国やマムルーク朝などでも使われていた。一方で、歴史的な署名を現代に蘇らせる人もいる。ロシアのアラビア書道家ウラジミール・ポポフ氏は、数々の著名人のトゥグラをアート作品として制作しており、その中には鳩山由紀夫前首相や明仁上皇と美智子上皇后のトゥグラもある(かっこよすぎるのでぜひポポフ氏のサイトで見てほしい)。ウラジミール氏は、1924年生まれで第二次世界大戦時にソ連軍として従事。戦後は現在のタタールスタン首都カザンにある美術学校で学びその後、70歳にしてアラビア書道を始めたという、スーパーおじいちゃんなのであった。
参考資料
Bursaulucamii, Bursa Ulu Camii’nin Mimari Özellikleri, 201
International Exhibition of Calligraphy, Interview with Vladimir Popov, 2018
Vladimir, https://vlademir.ru/