コジャテペ・モスク、アンカラ、トルコ、現代
トルコの首都アンカラにやってきたのは2月。トルコの各地は、暗澹たる雲に覆われ、太陽の光を見ることはまれである。ゆえに、冬の間は観光客は寄り付かない。アンカラは、公式には首都だがイスタンブールのような見所にあふれているわけでもなく、形式としての首都感が強い。商業や観光の中心であるイスタンブールが首都である方がしっくりくるが、トルコ建国の父ケマール・アタチュルクは、宗教色の強いオスマン帝国との決別、そして世俗的な近代国家の出発点として、このアンカラを首都に選んだのである。それにしても、2月のアンカラは厳しい。降り積もる雪に、マイナス20度という数字をみて、おののく。マイナス20度にもなると、寒さが痛みにかわり、外を歩くのもおっくうになる。なんでこんなところを首都にしてしまったのだろう・・・と建国の父に問いたい。
近代性を象徴するアンカラとはいえ、モスクの多くは、オスマン帝国スタイルを用いたものが多い。コジャテペモスクもその1つである。軍事クーデターによる着工延期、建築家の死、設計変更などを経て、着想から20年。1987年にようやく完成した。これだけ難に見舞われたら、もはや呪いのモスクなんじゃないかと思ってしまう。16世紀の伝統的なオスマンスタイルを取り入れたこのモスクは、スレイマニエモスクやスルタン・アフメットなどと共通するところがある。外観はやはり巨大な鉛のドームに、4本の鉛筆型ミナレットという、イスタンブールのスカイラインでもおなじみの光景。
モスクを訪れたのは、連日降り続いた雪が降りやみ、ようやく晴れ間が姿を現した日だった。それまでは、とてもじゃないが寒すぎて外を歩く気になれない。晴れとはいえ、やはり寒い。しかし、せっかくアンカラに来たのに、家に引きこもっているのはもったいない。ということで「えいやっ」と嫌がる身体を引き連れやってきたのが、このモスクであった。巨大なモスクの扉を開けて目に入ってきたのは、太陽系だった。正確にいうと、太陽系のような形をしたシャンデリアなのだが。人のいない巨大空間は、室内とはいえやはり寒い。しかし、この太陽系のおかげでどこか暖かさすら感じる。巨大なドーム空間の中央に鎮座する太陽系。そこには、モスクという”室内”でありながら、宇宙を感じさせる無限の空間が広がっていた。